どうして？罰ゲームかなにか？
高校生になったばかりの頃、私は恋愛で失敗をしてしばらく誰かを好きになったりはしないのだろうなと思っていたし、実際好きにはなりませんでした。
男子生徒と普通に話はするし、どちらかと言えば男女隔たりなく仲良くしていたと自負しています。でも、それが恋愛につながるかと言えば別の話で、男女関係なく仲のいい友達で居られると思っていました。
そんな中、あるひとりの男子生徒に呼び出されました。
みんなでワイワイ遊ぶことはよくありましたが、二人きりというのは全くなかったので、どうしたんだろう？と心配しつつ呼び出された場所に行くと、彼が待っていました。
当時はまだ駆け出しでしたが、彼は今を輝く有名男性俳優です。
そんな彼に、突然告白をされました。
恋愛的な感情を抱いたこともなく、仲のいい友達だと思っていたのに、それが崩れるような、なんとも言えない気持ちでした。
告白をしたことはありましたが、されたことはなかった私は、なんと言い返したらいいのか分からず、立ちすくんでしまいました。するとその様子を察したのか「伝えたかっただけだからそんなに困らないで」と優しく言ってくれ「また明日！」と去って行ってしまいました。
当時、まだ幼くバカだった私は「私ブサイクだし人見知りだし、私なんかをちゃんと好きになる人なんて居ないだろうから、罰ゲームとかやらされているのかなぁ？可哀相だなぁ…」と思ってしまいました。
でも私がここでフッてしまったら彼が他の人たちに笑われてしまうのか、私がここで受け入れたら本気にした私がバカにされて終わるのだろうかと考えると、後者を取るのはごく当たり前のことに思えました。
その日の夜、彼にLINEをすることにしました。
告白を受けることをです。
でも、嘘をつくのはよくないと思ったので「私は好きとかいまいち分からないけどそれでもいいか」と聞くと、すぐに電話がかかってきて「大丈夫だよ！好きになれなかったらその時は仕方ない。これからよろしくね」と相変わらず優しく声をかけてくれ、なんで罰ゲームなのにここまでやるんだろうと不思議に思っていました。
後から知った話なのですが、彼は入学式の時点で私に一目ぼれをしていたそうです。
私は自分の顔に自信がないので一切理解できなかったけど「変わった人もいるんだなぁ」と失礼なことを思っていたことが懐かしいです。罰ゲームだなんて思ってしまっていてとても申し訳ないですが、そうとしか思えなかったです。
浅くて苦いお付き合い
なんやかんやあり、彼とお付き合いすることになりました。
正直男性としっかりとお付き合いさせていただくのはその時が初めてで、友達としてしか見ていなかった彼にどのように接していくのが正解か全くわかりませんでした。
むしろ、友達のままではいけなかったのだろうかと素朴な疑問さえ浮かんでいました。私は彼のことが好きだったけど、その好きは恋愛感情的な意味は一切なく、友達としての好きだったので、頭を悩ませました。
私が難しそうな顔をするたびに、悩ませてしまっているのだろうかと感づいた彼が、申し訳なさそうな顔をしながらごめんねと言い、頭を撫でてくれたことが記憶に新しいです。今思えば、ひどいことをしてしまったいたなと思います。
ぎくしゃくした関係のまま、数か月付き合い続けました。
ほかの男子生徒と付き合ったクラスメイト達が「すぐに手を出された」「ただのセックス目的だった」と文句を言っているのをよく聞きましたが、彼は手を出してくるどころか、私から何か行動を起こさない限り、触れてもきませんでした。
それが私に対する遠慮なのか、誠意なのか、はたまた嫌悪感からなのかは今の私にはわかりませんが、子供らしい、清純なお付き合いが続きました。
付き合ってしばらく経ち、彼の家で遊んでいるとき、なんとなくの気持ちで体を寄せ合っていると、自然とそういう流れになり、私から誘う形でセックスをすることになりました。
その時ですら私は彼に対する感情は分かっていなくて、流れるままにしてしまっただけでした。
それでも、ことを終えた後の彼は満足そうで、それを見て私も満足だと思うことにしました。そうでないと自分への嫌悪感がひどく、耐えられませんでした。
行為をしたことは失敗であったと心から言えます。中途半端な気持ちでしてしまい、また彼を傷つけることになるのかもしれないのに、体を許してしまって少し期待させてしまったのではないかと。
浅はかな付き合いだなぁと思います。
クラスの女子生徒は彼氏の態度、行動一つ一つに一喜一憂して、コイバナに花を咲かせているのに、私は興味が全くないように見えたそうです。
「折角かっこいい彼氏と付き合っているのにもったいない、私が付き合いたいくらいだ！」と不満を言われたこともありました。
ほかの子と付き合ったほうが幸せなはずなのに、どうして私と付き合い続けるのか疑問でしかありませんでした。失礼な話ですが、罰ゲームと言われたほうがはるかに楽でした。
そして今、輝いている彼
付き合い続けていくうちに、彼は俳優としての道をしっかりと歩み始めました。
それと同時に普通科高校での学生生活は、俳優としての彼には邪魔で足枷になるようになっていきました。
その頃「学校をやめようか」と思っている旨、相談されました。
その時でさえ、私はまだ彼に恋愛的な感情を抱いてはいませんでした。それでも友達としては好きだったのでいなくなったら寂しいなぁ…とは心から思っていました。
でも夢に向かう彼はとても輝いていて、応援したいと思い、引き留めることはなく、俳優の道に進むことを勧めました。
それと同時に、お付き合いを解消しようということも伝えました。私の存在は邪魔になると思うし、彼にとってなにもメリットがないと思っていたからです。
それでもここまで付き合い続けてくれた彼はとても優しく、いい人だなと思っていましたが、結局最後まで恋愛的な好きになることはなく、友達としての好きでずっと仲良くいたかったと思ってしまいました。
最低だとは思いましたが、告白という事象で関係を崩してほしくはなかったです。
しばらくして彼は学校をやめました。
定時制の高校に通うと言っていた気がします。
体育祭や文化祭には遊びに来てくれていましたが、三年生にもなるとそういったこともなくなりました。
お仕事で忙しくなってきたようです。とても喜ばしいことで、同級生と出演ドラマを見ては「すげー！」とはしゃいでいました。
テレビを見ていると、彼のことを見ない日がないくらいに素敵な俳優さんになりました。そんな彼を弄ぶようなことをしてしまったことはとても申し訳ないです。
今、きっと素敵な方々が周りに多くいると思いますし、私のことなんてとっくに忘れてくれているとは思いますが、願わくば記憶から抹消してほしいです。
それが彼のためになると思うから。彼にとって私との恋愛は失敗だと思うし、私にとっても申し訳ないことをしてしまい、取り返しのつかない失敗だと思っています。
それでも彼といた時間がつまらなかったわけではなくて、普通の高校生のカップルのようなことは一通り経験させてもらったし、楽しかったです。
私にとってはそうでも、彼にとっては好きな女がいつまで経っても乗り気にならなくて、自分を好きにならなくて、でも付き合っているというよくわからない状態で、とても疲れただろうなぁと思います。
今、彼は恋愛ではなくお仕事でとても忙しいと思います。私はもう連絡を取らなくなってしまったけど、ずっと元気で、芸能の世界で輝いてほしいと心から願っています。
23歳 会社員の今を輝く若手俳優との高校時代の恋愛の話
