ずっと思いを寄せている2歳年上の職場の先輩
恋愛で大失敗した経験があります。
今でもあの時のことを思い出すと、胸がキュッと辛い気持ちになります。
入社時からずっと思いを寄せている2歳年上の先輩男性社員がいました。配属された部署にその先輩はいました。見た目はめちゃめちゃイケメンというわけではないのですが、性格が明るく、部署内のムードメーカー的な感じでした。
入社したてだった私は、とにかく緊張しまくりで仕事をしていたので、何かと失敗ばかりしていました。それをやさしくフォローしてくれたのが、その先輩だったのです。
すぐに恋に落ちてしまいました。
口調もやわらかで、とても話しやすかったので仕事のことなど色々と相談するようになりました。
そしてある時、昼休憩の電話当番に私と先輩が残ることになったのです。
事務所に2人っきりという状態になりました。とてもドキドキして、私の方はかなり先輩を意識してしまいました。先輩の方は、いつもと変わらない感じで接してくれていたので、会話も弾みました。
普段は電話が鳴りっぱなしで忙しいのですが、その時は急にピタッと電話の音がしなくなりました。
その時、先輩から、「好きなアーティストやバンドとかいる?」と聞いてきました。
〇〇のバンドが好きだと答えると、先輩も実は好きなバンドだったということが判明したのです。
するとそのバンドの良さについて話が盛り上がり、すっかり意気投合しました。
「今度バンドのライブに一緒に行ったり、飲みに行ってバンドについて話したりしたいね。」といった展開にまで話が進んだのです。
先輩に恋心を抱いている私としては、かなりいい展開になったので、とても嬉しく思いました。普段から話しやすい先輩でしたが、趣味も同じだということがわかって、よりもっと近く感じられるようになりました。話せば話すほどどんどん先輩のことが好きになっていったのです。
このバンドの話をきっかけにバンドのCDを貸し借りしたり、仕事帰り送ってもらうこともありました。
当時、恋愛経験があまりなかった私にとっては、これだけでもう恋人気分になってしまいました。もしかしたらこのまま本当に恋人関係になれるかもしれないと、すっかり妄想が進んでしまっていました。
ある意味、この時点ではフラれるという発想はこれっぽっちもないぐらいでした。
こんなに仲が良いのだから、自然な流れとして恋人になるのが普通だとまで思い込んでいました。とは言え、先輩への恋心を1人で燃え上がらせて、とても幸せな時期だったのです。
先輩への思いを込めた手作りチョコレート
先輩への恋愛感情が燃え上がっていた頃、バレンタインというイベントが近づいていました。
ここはもう先輩に告白するしかないと思い、人生で初めてバレンタインチョコレートを手作りすることにしました。
とは言え、人生で始めてチョコレートを作ることになったので、何をどうしたらいいのかわかりませんでした。とりあえず、手作りチョコレート売り場に行って、チョコや型、ラッピングなどを購入し自己流で作ってみることにしました。
チョコレートを湯煎して型に流し込んで冷やして固めればいいといった知識しかなかったので、適当にやってみたところ大失敗でした。
出来上がったチョコレートは、見るからに成分が浮き出てしまい、見た目にツヤが全くありません。ヒビが入ってしまっているものもありました。この時は、チョコレートの適温などをよく知らなかったのです。もっと調べて作る必要があったのに、その手間を省いたのが失敗の原因でした。
出来上がったチョコレートを見て、自分でもさすがにこれは酷いデキだと思いました。これは人様にプレゼントできるレベルではないと思いました。
でも逆に、この方が手作り感があっていいかもといった考えが浮かび始めました。あまりにも完璧に出来過ぎてしまっていると、まるで市販の物を購入して手作りっぽくしたように見えてしまうかもしれない。
ちょっと失敗した感のある方のが、一生懸命作った感じがしていいかもとも思いました。味は、チョコレートなのだし、捨てるのは勿体無いし、折角作ったのだから、これを先輩にプレゼントしようと思い始めてしまいました。
今の私からすれば、この時の私をちょっと待ってと止めに入っていると思います。どうしてあの当時は、失敗したチョコレートに対してあんなに前向きに考えられたのかがわかりません。
ですが、あの時は初めて自分でチョコレートを手作りしたという行為に満足してしまっていたようです。手作りしたチョコレートは例え失敗していても、市販の物よりも気持ちが伝わりやすいと思っていました。
そのため、特に作り直さず、失敗した手作りチョコレートを先輩に渡すことにしたのです。
リボンでキレイにラッピングして、バレンタインの準備は万端に整いました。
先輩に渡すシュミレーションを何度も頭の中で繰り返し、何と言おうか、どういった感じでチョコレートを渡そうかとイメトレしていました。すっかり1人でドキドキ浮かれまくっていました。もう成功するパターンしか頭に描いていませんでした。
勇気をだしたバレンタインデー、そして翌日。
バレンタイン当日は仕事帰りに先輩にチョコレートを渡しつつ告白する予定でいました。
その日は朝から仕事中でもドキドキソワソワして緊張しまくっていました。女性が8割を占める部署でしたので、上司に義理チョコを渡す人なども多く、バレンタインイベントを楽しんでいました。私のように本気告白する人は逆に少ない感じでした。
先輩への気持ちは誰にも相談していませんでした。同じ職場内で恋愛関係の話をするのが恥ずかしかったからです。ましてや同じ部署に好きな人がいるなんて言えないと思っていたこともあり、誰にも言わずに告白するつもりでした。
1日中緊張しまくりで過ごしたことで、帰りの時間にはかなりぐったり疲れてしまいました。とは言え、これからが本番です。
先輩は残業があるとのことで、事務所でまだ仕事をしていました。他のスタッフもまだ数人残っていたので、なかなか渡すチャンスがありませんでした。
そんな時、ふと先輩がトイレに向かて席を立ったのです。
「今だ!」と思い、チョコレートを握りしめて先輩を追いかけました。
そして失敗した手作りチョコレートを先輩に渡したものの、何も告白の言葉が出てこなくなって、そのまま「チョコどうぞ!」と言って走り去りました。
そのまま事務所に帰るのが恥ずかしくなって、帰宅してしまいました。その後の先輩がどうしたのかはわかりません。でも、自分の気持ちを伝えることができたという満足感はありました。
しかし次の日、衝撃的な事実を知ってしまいました。
先輩に会うのが恥ずかしいと思いましたが仕事なので勇気を持って出勤しました。事務所では、年配のスタッフの人がワイワイ噂話をしていました。
どうやら先輩がこの事務所内の子に昨日告白されて、付き合うことになったらしいといった噂話でした。
それを聞いた時、私のことだと思い、ドキドキしてしまいました。
しかし、よくよく話を詳しく聞いてみると、先輩が付き合うことになった相手は私ではありませんでした。
私と同期の女の子のことだったのです
その女の子の名前を聞いた時、頭が真っ白になりました。
いつも一緒にパートナーとして働いていた子だったのですが、まさかその子も先輩を好きだったとは全く知りませんでした。しかも、告白して付き合うことになったのは、その子の方なのです。
ショックで廊下に出ていった時、バッタリ先輩に会いました。
「昨日チョコありがとね。あれ義理でしょ?」と言われました。
その言葉もグサリと胸に突き刺さりました。
失恋した上に義理チョコだと勘違いされたというショックがダブルで襲ってきました。
人生の中でも1番辛いバレンタインの思い出となってしまいました。
44歳 専業主婦のバレンタインで失敗した恋愛の体験談より