恋愛において見せたい自分より、本来の自分が一番大事
これは私の友人の体験談です。
彼女は見かけこそバリっとした華やかなイメージの美人なのですが、実はあまり素の自分に自信がない、と言うウィークポイントを持っています。
厚めの化粧の下に、少し引っ込み思案な本性を隠していたのでした。
彼女は20代前半、実家住まいのフリーターで、いくつかの職を掛け持ちしています。
忙しい日々の中で彼氏を探すのに心を砕いているのですが、ある時店員として働いているお店の本社社員さんに恋をしました。
時々納品に来る際に見かけるだけなのですが、ズバリタイプそのものだったので、ほぼ一目惚れに近かったそうです。
今まであまり、長続きする真剣な恋愛をしてこなかったせいもあり、友人はかなり本気で
「この恋愛は成就させたい」
と考えるようになりました。
ところで、その会社には店員間の飲み会・女子会に加え、店舗担当の正社員グループを交えての親睦会がよくあり、彼女はそれを好機ととらえました。
仲の良かった同年代のバイト同僚には根回しをしておき、それとなく接近できるチャンスを作ろうとしました。
さて飲み会当日、彼女はひどく緊張してもいたので、会の初めから少し飛ばしてお酒を飲んだそうです。
彼女はお酒には強い方で、「頭の冴える」酔い方をします。
いつものやや控えめな態度ではなく、やや強気というか開放的な態度になる酔い方なので、自分でもこの勢いを借りて「明るい自分」を意中の彼に印象付けようとしたのでした。
その思惑は一見、大いに成功したように見えました。
2次会のカラオケにても、いつもの自分からは想像できないさっぱりとした明るさで、歌って踊る(!)所まで行きました。
恐らく、お酒の力を借りて、一番自分が理想としていた本人像を、周囲と意中の正社員さんとに見せられたと思ったのでした。
その後も何度かこういった飲み会はあったそうですが、そのたびに友人はお酒をお守りのようにして、「明るい自分」を印象付け続けたのです。
例の正社員さんとも、頻繁に会話できるような間柄に近づいた
…と思い込んでいました。
ところが、実際はこれが大失敗だったのです。
彼女のことをあまり良く思っていない年上の同僚店員が一人いたのですが、この女性が
「●さん(友人の意中の人です)が、宴会女子は苦手だって言ってたらしいよ」
と言い出しました。
ここには個人的な意地悪の意味もあったのでしょうが、友人は不安にかられて、飲み会で親しい間柄となった本社の若い女性社員に、それとなく本社側での事情を聞いてみたのです。
友人が愕然としたことには、●さんは実は華やかな場が苦手で、飲み会の前も機嫌が悪いと言うのです。
その後、●さんは仕事のスケジュールなどを理由に親睦会に出席しないようになり、友人は空回り状態を続けました。
たまに職場で顔を合わせても、そっけなく振る舞われて相手にされないのです。
その冷たい態度に友人はあっけなく失恋。
こんなことなら、普通の素の自分で通してみれば良かった…と、お酒に頼って自分を演出してしまったことの失敗を悔やんでいました。
自分が一番見せたかった自分を見せる事には成功したのですが、それがかえって相手の好意からかけ離れる理由になった…という皮肉な話です。
「以降の冷たいドライな態度を見せられて、何だこの人…と思えるようになってしまったから、特に未練はないんだけど。それでももしかして、普通の自分で普通に接していたら、別のやり方で優しくしてもらえて、けっこういい仲になれたんじゃないのかな、という思いはする。顔がすごくタイプだったから勿体なかった…。」
とこぼしていました。
勿体ない、と考えてはいてもこれも縁だったんじゃない、と私はフォローしておきましたが。