居酒屋でまさかのイケメンとの出会い
ある日の仕事の後、同期の女友達と居酒屋で飲んでいたら、隣りのテーブルにイケメンのサラリーマンが二人座りました。恋人募集中だった私達二人が彼らに気付かないわけがありません。
全く別の話をしつつもお互いに腹の中で考えていることが一致していることに気付き、ついつい顔がにやけてしまう私達でした。
そんな気配を察していたのかいなかったのか分かりませんが、暫くすると彼ら二人のほうから私達に声を掛けてきました。
「お仕事帰りですか?」とか「職場は近いんですか?」とかそんな会話を少ししたうえで、彼らのほうから
「良かったら店を変えて一緒に飲みませんか?」と誘ってきたのです。
一人でいる時のナンパであれば警戒してしまいますが、友達も一緒にいて向こうも二人という安心感が手伝って、私達は彼らと一緒に別の店で飲み直すことにしました。
4人でテーブルを囲み冗談交じりで会話を楽しみ、最後はお互いの連絡先を交換して別れました。
私は自分の筋向いに座っていたA男のことを気に入ってしまい、どうにかもう一度会えるチャンスを作れないか?と思うようになりました。
かたや同僚の女友達S美は
「この前は楽しかったね」
とは言うものの、彼らのどちらかに恋愛感情を抱いているような様子はなさそうに見えました。
私はナンパされた男性に一目惚れしたことが恥ずかしくてS美には言えませんでしたが、「また一緒に飲んでみたいね」と彼女に話すと、彼女も「いいね!」と答えました。
こうしてまた4人で飲む機会がありました。
今回はA男は私の向かいに座ってくれたので、ラッキーだと思いました。
次第に私達はそれぞれの向かいに座った男性と二人で会話をするようになりました。
私はA男に彼女がいないこともさり気なく確認しました。
休日は映画を観たり、ドライブに行ったりするという彼に「最近、気になる映画があるんですけど、一緒に観に行きませんか?」と訊くと、「それ、俺も観たいと思っていたんだよねー」と言われました。
すかさず「じゃぁ、今度、連絡します。」と伝えて彼の部屋の電話番号まで教えてもらいました。
S美は彼女の向かいに座っていたB男と何やら大笑いしながら盛り上がっていたようでした。恋愛に発展しそうな雰囲気ではありませんでしたが、本人が楽しければそれでよかったのではないかと思いました。
帰りはB男と私、A男とS美が同じ方向でした。
私はB男と同じ電車で帰りながらずっとA男のことをB男に訊いたりしていました。
今考えたら少しB男に失礼だったかも知れませんが、私の彼に対する気持ちにB男は気づいたと思います。
でもこの帰り道が失敗のもととなって私は切ない失恋を経験することになってしまいました。
次の週末、A男の家に電話をかけると留守電に繋がりました。
黙って切るのもマナー違反かと思い、私は先日の飲み会のお礼と映画を一緒に観に行く日を決めたいので連絡が欲しいというメッセージを残しました。
でも彼からは連絡がありませんでした。
落ち込む私は、S美にそのことを伝えると、S美が困惑したような顔をしつつ思いがけない話を打ち明けました。
「実は私、4人で飲んだ帰り道にA男から告白されて、付き合い始めたばかりなんだよ。ごめんね・・・。」
この一言は本当にショックでしたが、私の切ない思いとは裏腹にS美の口からはさらに追い打ちをかけるような話が続きました。
私が彼の留守電にメッセージを吹き込んだその時、実は彼の部屋には彼とS美が一緒にいたのだそうです。
つまり、あのメッセージをリアルタイムでA男とS美は彼の部屋で聞いていたのです。
ドキドキ緊張しながら吹き込む私の声を聞いて、二人はどんなふうに思ったのだろう?と考えただけでも顔から火が出るほど恥ずかしくてたまりませんでした。
留守電を聞いた二人は悩みに悩んで、結局S美の口から事情を話すことに決めたそうです。
これまで失恋したことは何度かありますが、こんなにバツの悪い失敗は初めてです。
S美とも職場では3か月くらい気まずい関係が続いてしまいました。